{site_name}

オペレーションを進化させる
現場のWEBマガジン
一生懸命作ったトークスクリプトは、なぜ、使われないのか。
  • #コールセンター
  • #コミュニケーション
  • #目標達成
  • #SaaS
  • #トークスクリプト
  • #デジタルトランスフォーメーション
  • #DX

DIGITAL

形柳亜紀

2020.10.21

新たなものをインストールしたくなる季節

スポーツの秋。読書の秋。芸術の秋。

古来より秋は「何かを新たにインストールして、自分を変えないと。」と思わせがちなのはなぜでしょう。

人はそのためにスポーツクラブに行ったり、英語を習ったり、資格の勉強を始めたりします。
自分を変えるために「新たなインストールをしようと決意する」ことは、今日の気持ちだけでできます。

一方、インストールしたことに満足し、その後インストールを超える価値を生み出せるまで作業を継続することは至難の業です。

これが古来より「三日坊主」と言われたりします。「本を買った」「スクールの体験授業に参加した」といった初期動作で終わってしまうのです。

さて、企業においても、SaaS型システムが増えて、このような「新たなインストール」がしやすくなっています。クラウドシステム企業のHPを見ると、各社の導入実績が掲載されています。

しかしながら、インストールに価値を見いだせているか = 使いこなすまでに活用できているか、については、なかなか外から確認することはできません。

まずは利用しましょう、の取り組み

以前担当していたコールセンターで、大規模なシステムの導入がありました。

スクラッチでその会社のために開発されたシステムで、総投資費用は3億円。
そのシステムの目玉機能は「FAQシステム」でした。

フローチャート形式で、顧客のヒアリング項目が出て、その通りに対応していくと、顧客対応が正確に完了します。
その上、対応内容がボタン一つで文書化されて、CRMシステムへの入力が完了するような仕組みでした。
大変先進的な仕組みで、そのFAQコンテンツには10名以上の社員チームが作成にあたっていました。

大変良いシステムでしたが、導入当初はオペレータにほとんど使われませんでした。
オペレータの言い分は「これまでのやり方でわかっているのでいらない」「FAQを検索しても顧客の希望のものがヒットしなかったから、使えない」などというものでした。

3億円もかけて導入し、10名の社員チームで作成している気合のシステムが、ほとんど使われない状況は大問題となり、オペレータに使ってもらうための施策が打たれました。

その中の一つ「FAQ活用率」が、我々アウトソーサーのKPIとなりました。

「FAQ活用率」の取り方は以下の通りです。

  • オペレータがFAQを利用するよう促す
  • オペレータがFAQを利用したら、アンケートに「FAQを使いました、ラジオボタン」を選んで送信
  • FAQを利用したが不備があったら、どのような不備があったかをアンケートに書いて送信
  • その送信件数と応対件数から割合を出してそれを「活用率」とする

その業務のSVであった私は、「品質を高める」「生産性を高める」というKPIであれば納得がいきましたが、「勝手に導入されたシステムの利用状況をKPIにされるなんて、本質的ではない」と思いました。

しかし、私がどのように考えていようとも、このようなKPIが設定されたことによって、「FAQ活用率」に我々は向き合うことになりました。
結果として、数%程度であった活用率は、30%、50%と高まっていきました。

また、利用が増えたことで、ユーザーの要望が具体的になり、FAQシステムがより良くなっていきましたし、その結果、FAQシステムの導入効果を私自身もユーザーとしても感じるようになりました。

イノベーターはシステムを導入したら、セールスマンになってしまう話

例えば、会計システムなど「これまで使っていたものを別のシステムに変更する」ということあれば、会計処理をするという役割が明確なので、使われることになります。

しかし「新しい価値を生み出す」システムは、言い換えれば「どう使えば効果が出るのか」わからないシステムでもあります。その場合、使う動機付けがないとなかなか使われません。

SaaSで簡単にシステム導入ができる時代において、担当者レベルでシステム導入したものの、部門でまったく使われずに、課金だけが続いているという状況もあるのではないでしょうか。

個人的には、SaaSシステムを導入するときは、導入する担当者が買い側ですが、システムを導入した瞬間に、システム導入者は「社内セールスマン」になるような感覚を持っています。

そこで思い出すのは、エベレット・M・ロジャーズが提唱したイノベーション理論です。

イノベーション理論には、顧客層が5つあります。
イノベーターから徐々に、製品が広がっていくというものです。

  1. イノベーター
  2. アーリーアダプター
  3. アーリーマジョリティ
  4. レイトマジョリティ
  5. ラガード

初めて新しいシステムを導入する担当者は、社内では「イノベーター」です。

BtoBにおいては、導入した担当者1人だけが使いこなせれば、効果が出るようなシステムはそう多くないので、それを組織に持ち帰った瞬間、「イノベーター」は「みんなにどう使ってもらうのか」を考える必要が出てきます。

その流れの中で、「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」の間にある溝「キャズム」をどうしたら超えられるのか、を考える人になってしまう = システムの営業マンと同じようなミッションを背負ってしまうわけです。

社内においては、強制利用も一つの答え

先に述べた「FAQ活用率」は、この「キャズム」を超えるための施策だったのではないかと、今となっては理解ができます。

投資したシステムを「オペレータにちゃんと使ってもらえなければ、導入のメリットが出ない」わけですから、活用を増やすためにある意味、強制的に使うよう取り組ませることで、製品をより良くブラッシュアップして、「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」と浸透させていったのだと思います。

社内だからこそできる立派な浸透施策です。

しかし、「強制的にシステムを使わせることは、決して本質ではない。良いシステムならば使われるはず。」 そんなご意見もあると思います。

システムへのリテラシーや目的意識がばらばらな職場において、強制せずちゃんと使ってもらうには、多くのシステム会社の営業がやっているように、「利用ユーザーと想定される人のベネフィット」を読みに行くしかないのでしょう。

業務プロセスを一緒に見直したり、その上でどうシステムと親和性があるのかを伝えたり、新たなフローを考えたり、などの歩み寄りであろうと思います。

似たようなことは現場でも起こっている

コールセンターの現場で、通話時間短縮のために、「トークスクリプトを改定する企画」が定期的に行われます。

トークスクリプトの改定を担当するSVは、日々のエスカレーション、モニタリング、ミスやクレームの傾向から、様々な思想やコンセプトでスクリプトの改定に乗り出しますが、残念ながらオペレータがスクリプトを使ってくれない、ということが往々にしてあります。内容が、どれほど素晴らしくても、です。

これも同じように「キャズム」を乗り越えるための施策が必要になります。
例えば、このようなことです。

  • もう古いスクリプトは見ることができないように回収して、新しいスクリプトに差し替える
  • モニタリングをして、新しいスクリプトが徹底されているか確認する
  • 繰り返し周知する
  • 新しいトークが徹底されていないオペレータに新しいスクリプトの使用を促す

その過程の中では、あなたが一生懸命考え、愛しているスクリプトは、残念ながら「理解されない」前提で考える必要があり、実際に多くの人に理解されません。断言します。

定着のための取り組みを実行するのは、タスクや工数、努力ではなく、実はこのような「思い入れを持って企画したのに、すぐに理解してもらえない」という悲しみと向き合うことが、最も過酷なのかもしれません。

ビーウィズは「デジタル&オペレーション」として、コンタクトセンターやBPOセンターの豊富な運営実績・知見を基に、AIを活用したソリューションのご提供、RPAやAI-OCRを活用した業務効率化・品質向上のご提案、デジタルテクノロジーを活用した新たなコンタクトセンターサービス「Bewith Digital Work Place」をご提供しております。

■関連記事

■ライター「形柳亜紀」の最新一覧


関連記事